京都地裁 大阪高裁

賃貸マンション:更新料巡り攻防 「無効」判決相次ぎ

 賃貸マンションの更新料を京都地裁と大阪高裁が相次いで「無効」とする判決を出したことを受け、京都敷金・保証金弁護団(団長・野々山宏弁護士)が「更新料を一気に撲滅する」と攻勢を強めている。更新料返還を求める集団訴訟を視野に入れ、6日には被害事例収集のための電話無料110番を実施。これに対し、家主側は「代金の踏み倒しに等しい」と強く反発しており、高裁で敗訴した弁護団は4日午後にも最高裁に上告する。【熊谷豪】

 ◇借り主、集団訴訟も検討/家主、強く反発上告へ
 更新料は賃貸住宅で1〜2年の契約期間を更新する度に借り主が家主に支払うもので、70年代に定着したとされる。

 国土交通省の07年の調査では、首都圏や京都を中心に少なくとも14都道府県で更新料の慣行があり、最高の神奈川では90%の物件に設定され、京都は55%だった。全国では100万戸以上に設定されているとみられる。

 更新料の金額は、首都圏がおおむね賃料の1〜0・5カ月分だったのに対し、京都は平均1・4カ月分と高額だった。設定の理由(複数回答)は「一時金収入として見込んでいる」が53%と最も高く、「長年の慣習」も50%あった。

 更新料訴訟で、家主側は「更新料には家賃を補充する性質がある」と主張したが、判決は「借り主の利益を一方的に害しており、消費者契約法違反で無効」と断じた。

 借り主側弁護団は「追い風になる」と歓迎し、返還訴訟にとどまらず、適格消費者団体と協力して、更新料条項の使用差し止めを求める訴訟も検討する。

 一方、家主側弁護団は、更新料を払わない借り主を提訴するなど強気の姿勢を崩していない。

 業界紙も「最高裁でも負ければ、倒産する家主が現れかねない」と指摘する。

 京都敷金・保証金弁護団の電話相談は6日午前10時〜午後4時、弁護士や司法書士が応じる。075・222・0015。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090904dde041040046000c.html


賃貸更新料、2審の大阪高裁「無効」…借り主が逆転勝訴

マンションの賃貸契約を継続する際に支払いが義務づけられている更新料を巡り、京都市の会社員男性(54)が、支払い済みの更新料など計約55万円の返還を家主に求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。成田喜達(きたる)裁判長(亀田広美裁判長代読)は「更新料の契約条項は消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法に照らして無効」と述べ、男性の請求を棄却した昨年1月の1審・京都地裁判決を変更。家主に約45万円の返還を命じる借り主側逆転勝訴の判決を言い渡した。家主側は上告する方針。

 地裁での同種訴訟判決は京都、東京などで計4件あり、3件は借り主側敗訴。今年7月の訴訟では、京都地裁が借り主側勝訴の初判断を示したが、高裁レベルでの判決は初めて。

 判決によると、男性は2000年に京都市内のマンションに入居する際、月4万5000円の家賃と1年ごとに10万円の更新料を支払う契約を家主と結び、05年8月までに5回、更新料を支払い、06年11月に退去。07年に提訴した。

 1審判決は更新料を賃料の前払いとみなしたが、成田裁判長は「かなりの高額で前払いとみるのは困難。借地借家法では正当な理由なく家主は契約更新を拒否できないと定めているのに、説明せず更新料の支払いを義務づけている」と指摘。さらに「更新料という言葉で経済的な負担が少ないかのような印象を与え、契約を誘因する役割を果たしていると言われてもやむを得ない」と批判し、消費者契約法施行(01年)以後の更新料全額と未払い家賃を引いた敷金の返還を命じた。

 更新料 賃貸住宅の借り主が契約更新の際に家賃の1〜2か月分を家主に支払う慣行で、1960年頃に定着したとの見方がある。徴収されているのは首都圏や愛知、京都など100万戸以上とみられる。しかし近畿でも大阪、兵庫にはなく、ばらつきがある。

(2009年8月28日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20090828-OYO1T00305.htm?from=main1



賃貸住宅の更新料は「無効」判決…京都地裁

 賃貸マンションの契約更新の際に「更新料」の支払いを求める契約条項は、消費者契約法に反するとして、京都府長岡京市の20歳代の男性会社員が、支払い済みの更新料など46万6000円の返還を家主に求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。


 辻本利雄裁判長は「入居者の利益を一方的に害する契約条項」と認定、同法に基づいて、更新料の契約条項を無効とする初の判断を示し、家主に請求全額の支払いを命じた。

 国土交通省によると、更新料が設定された賃貸住宅は京都や首都圏などに約100万戸あるとみられる。同種の訴訟では更新料を有効とする判断が地裁段階で続いており、判決は他の訴訟にも影響を与えそうだ。

 判決によると、男性は2006年4月、京都市下京区内のマンションに、賃料月5万8000円、2年ごとの契約更新の際には賃料2か月分の更新料を支払う、との内容の契約を結んで入居。08年の更新時に11万6000円を支払ったが、同5月末に退去した。

 裁判で家主側は、「更新料には賃料の補充的要素がある」などと主張したが、辻本裁判長は「更新後の入居期間にかかわりなく賃料の2か月分を支払わなければならず、賃借人の使用収益の対価である賃料の一部とは評価できない」と指摘。そのうえで、「家主が主張する更新料の性質に合理的理由は認められず、趣旨も不明瞭(めいりょう)。男性に具体的かつ明確な説明もしていない」などと述べ、契約条項は無効と判断した。

 男性は今回の訴訟で、入居時に支払った保証金(敷金)35万円の返還も求めており、判決は保証金についても消費者契約法に照らして無効とし、請求を認めた。

 男性の弁護団は「判決内容は当然の判断」と評価。家主側の代理人弁護士は「拙速に出された判決で遺憾。内容を精査し、今後の方針を決めたい」としている。

(2009年7月24日02時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090723-OYT1T00700.htm